自分を責めるのはなぜ?——「これでよかった」と自分に許可を出せない心理

誰かの言葉や態度に傷ついたとき、
「腹が立つ」「そんなことを言われる筋合いはない」「私は悪くない」
そう感じることがあります。
ところが、少し時間が経つと、
「でも、あんなふうに怒った自分も悪かったのではないか」「私の受け取り方がおかしかったのかもしれない」「もっと違う対応ができたのではないか」
今度は自分を責め始めてしまう。
怒っていたはずなのに、最後にはいつも自分が悪かったような気がしてくる。
そんな経験はないでしょうか。
これは単純に「自己肯定感が低いから」と片づけられるものではないかもしれません。
こころの中で起きていることを丁寧に見ていくと、一見矛盾しているように見える「怒る自分」と「自分を責める自分」の両方が、実はあなたを守ろうとしていることがあります。
そして、そのさらに奥には、
「自分で自分に『これでいい』と言えない」
という苦しさが隠れていることがあります。
怒ったあとに、自分を責めてしまう
人から傷つけられたり、理不尽なことをされたりしたとき、怒りが湧くのは不思議なことではありません。
「それは嫌だ」「そんな扱いをされたくない」「これ以上傷つけないでほしい」
怒りには、自分を守るための側面があります。
ところが、怒りを感じたあとに、
「怒るべきではなかった」「こんなことで腹を立てる自分は心が狭い」「相手にも事情があったはず」「結局、自分が悪いのではないか」
という声が出てくることがあります。
すると今度は、
傷つけられたことそのものよりも、「怒った自分」を責めることに苦しむ
ようになります。
ここで大切なのは、
「怒っている自分」と「自分を責めている自分」のどちらが正しいのかを、すぐに決めようとしないことです。
少し違う角度から、この二つの反応を見てみます。
怒りは何を守っているのか
こころのケアラボ仙台では、IFS(内的家族システム療法)の考え方も取り入れながら、こころの中にあるさまざまな「部分」に目を向けます。
たとえば怒りについても、
「怒ってはいけない」
と抑え込むだけではなく、
「この怒りは、何から自分を守ろうとしているのだろう?」
と考えてみます。
傷つけられた。
軽く扱われた。
自分の気持ちを無視された。
否定されたように感じた。
自分の居場所が脅かされたように感じた。
そんなとき、
「これ以上傷つけられたくない」「私はそんな扱いをされていい人間ではない」
と、自分を守るために怒りが出てくることがあります。
つまり怒りは、単なる「悪い感情」ではありません。
もちろん、怒りから相手を傷つける行動をしてしまった場合には、その行動について考えたり、必要であれば関係を修復したりすることは大切です。
しかし、
怒りを感じたことと、相手を傷つける行動をしたことは同じではありません。
まずは、
「なぜ私はこんなに怒ったのだろう」
ではなく、
「この怒りは、何を守ろうとしていたのだろう」
と考えてみる。
それだけでも、自分の反応の見え方が少し変わってくることがあります。
自分を責める声にも役割がある
では、
「そんなふうに怒る自分はよくない」「自分にも悪いところがあったのではないか」
と自分を責める部分は、どうでしょうか。
この部分は、とても苦しい存在に感じるかもしれません。
自信を失わせたり、自分を嫌いにさせたりするため、
「こんな自己批判さえなくなれば楽なのに」
と思うこともあるでしょう。
けれども、この自己批判にも何らかの役割があると考えてみます。
たとえば、
「そんなに怒ったら嫌われる」「関係が壊れてしまう」「一人になってしまう」「自分が我慢したほうが安全だ」
そんなことを心配しているのかもしれません。
だから、自分を責めることで、
「もう怒らないようにしよう」「もっと相手に合わせよう」「次は失敗しないようにしよう」
と自分をコントロールしようとする。
自己批判は苦しいものですが、その奥には、
これ以上傷つかないようにしようとする働き
が隠れていることがあります。
正反対の二つの反応が、同じものを守っていることがある

ここが、とても大切なところです。
怒っている自分は、
「これ以上傷つけられたくない」「自分の居場所を守りたい」
と思っている。
一方、自分を責める自分は、
「怒りすぎて関係を壊したくない」「人から嫌われて居場所を失いたくない」
と思っている。
表面的には、まったく反対です。
一方は「相手が悪い」と言い、もう一方は「自分が悪い」と言う。
ところが、その奥まで見ていくと、
どちらも「自分が傷つかないこと」「居場所を失わないこと」を守ろうとしている
場合があります。
だから、
「怒らないようにしよう」「自分を責めないようにしよう」
と、どちらかを消そうとするだけでは、なかなか苦しさがなくならないことがあります。
どちらにも理由があるからです。
必要なのは、どちらかを悪者にすることではなく、
「どうして、そこまで守る必要があったのだろう」
と、その背景を理解していくことなのかもしれません。
自分に「これでいい」と許可を出せない
こうした心の動きを丁寧に見ていくと、さらに別のテーマが見えてくることがあります。
それが、
「自分で自分に許可を出せない」
という感覚です。
たとえば、
疲れているのに、休んでいいと思えない。
本当は断りたいのに、断っていいと思えない。
食べたいものがあっても、「食べていい」と誰かに言われると安心する。
自分の意見があっても、誰かから賛成してもらわないと不安になる。
自分で何かを選んだあとも、
「本当にこれでよかったのかな」
と何度も考えてしまう。
そして、誰かから、
「それでいいと思うよ」「あなたは間違っていないよ」
と言われて、ようやく少し安心する。
もちろん、人に相談したり、誰かの意見を聞いたりすること自体に問題があるわけではありません。
私たちは誰でも、人との関係の中で支えられています。
苦しくなるのは、
誰かに認めてもらえないと、自分の感覚を信じられない状態が続いているとき
です。
それは「性格」だけの問題ではないかもしれない
なぜ、自分で自分に「これでいい」と言えなくなるのでしょうか。
そこには、これまでの人間関係や愛着のあり方が関係していることがあります。
たとえば子どもの頃、自分の気持ちを表したときに、
受け止めてもらえることもあれば、そうではなかったこともあるでしょう。
自分の考えより周囲に合わせることが求められたり、
自分の気持ちより誰かの機嫌を優先したほうが安全だったり、
「どうしたい?」と自分の感覚を確かめてもらう経験が少なかったり。
もちろん、こうしたことがすべて親子関係だけで決まるわけではありません。
家庭以外の人間関係や学校生活、その後のさまざまな経験も影響します。
また、同じ環境で育ったとしても、その人がどのように受け取るかは一人ひとり違います。
だから、
「親のせいだ」「過去が原因だ」
と単純に決める必要はありません。
ただ、
自分の気持ちや感覚を信頼する機会が十分に持てなかった可能性
について考えてみることはできます。
もしそうだとしたら、
「私は自己肯定感が低い人間だから」
と考えるのとは、少し意味が変わってきます。
自分を認める力そのものがないのではなく、
その力を使いにくくなる経験や環境があったのかもしれない。
そう考えることができるからです。
自分との関係を少しずつ作り直す
では、自分に許可を出せるようになるためには、どうすればいいのでしょうか。
いきなり、
「自分を好きになろう」「自分を100%肯定しよう」「どんな自分も受け入れよう」
とする必要はありません。
むしろ、それができない自分を見て、
「やっぱり私はダメだ」
と、さらに自分を責めてしまうことがあります。
最初は、もっと小さなところからでいいのだと思います。
怒っている自分に気づいたとき、
「怒ってはいけない」
ではなく、
「何か嫌だったんだろうな」
と考えてみる。
自分を責めていることに気づいたときも、
「また自分を責めている。やめなければ」
ではなく、
「この部分も、何かを心配しているのかもしれない」
と考えてみる。
そして、
「私は正しかった」
と無理に言い切れなくても、
「そう感じたのには、何か理由があったのかもしれない」
くらいのところに立ってみる。
それも、自分との関係を作り直していく一歩です。
自分を肯定するとは、いつでも「自分は正しい」と思うことではありません。
間違えることもある。
怒りすぎることもある。
誰かを傷つけてしまい、謝る必要があることもある。
それでも、
自分の中で何が起きていたのかを理解しようとすることはできます。
反応を責めるだけではなく、その反応が生まれた理由を知っていく。
その積み重ねの中で、少しずつ、
「私はどう感じている?」
「私はどうしたい?」
「今回はこれでいい」
と、自分自身に問い、自分自身で答えられるようになっていくことがあります。
「自分を責めること」がやめられない方へ
頭では、
「そんなに自分を責めなくてもいい」
とわかっている。
それでも、
人の顔色を気にしてしまう。
断ると罪悪感が出てくる。
自分の気持ちより相手を優先してしまう。
怒ったあとに強い自己嫌悪になる。
誰かに認めてもらえないと、自分の判断に自信が持てない。
こうした悩みの背景には、現在の出来事だけではなく、これまでの人間関係や愛着、過去の経験が関係していることがあります。
こころのケアラボ仙台では、
「その反応をどうやってなくすか」
だけではなく、
「なぜ、その反応が必要だったのか」
というところから、一緒に整理していきます。
怒る部分も、自分を責める部分も、無理に排除する必要はありません。
まずは、自分の中で何が起きているのかを理解するところから始めていきます。
自分との関係を、少しずつ作り直していくために。
愛着やこれまでの人間関係が、現在の「自分を責めてしまう」「人の顔色を気にしてしまう」といった悩みにどう関係するのかについて紹介しています。
【初めての方へ】
カウンセリングが初めての方は、こちらからセッションの進め方などをご覧いただけます。
一人で整理することが難しいと感じたら
自分を責めることを無理にやめようとしなくても構いません。
「どうして私はこうなったのだろう」と原因を決めつける必要もありません。
今起きている反応を一緒に見ながら、その背景を少しずつ整理していくことができます。
こころのケアラボ仙台では、愛着・トラウマ・アダルトチルドレンなどを中心に、IFS(内的家族システム療法)などの考え方も取り入れながらカウンセリングを行っています。
「こんなことを相談してもいいのかな」という段階でも構いません。




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